大学4年次の卒論(研究)のテーマ
『(利他性)共感』と『エンパス(共感能力者)』をテーマにしました。
全文ではありませんが、論文要旨がございますので、私の興味関心、エネルギー源の詳細をお知りになりたい方は、ご覧いただければ幸いです。
論文要旨
2018年度
担当教員:加藤 眞三
論文題名:傾聴-対話における愛他性の構築 〜エンパス (共感能力者) の概念から読み解く~
(内容の要旨)
共感 愛他性仮説やエンパスの概念についてまだ議論はある。私は、“ミラーリング”、“シェアドサーキット” という現象の発見により、“エンパス” という現象、愛他的共感が存在すると体験的に考えている。
本文では、ダニエル・ゴールマンやローズ・ローズトゥリーらが唱えた分類をもとに、傾聴や共感の姿勢について考察した。 傾聴の分類法からその意図を解釈したり、異なる分類を比較したりすることで、新たな知見を得ることができると考えた。
ローズが唱える“エンパス-共感型概念” のなかに、他者への共感に2つのタイプが当てはまるのではないかと考えた。1つは「感情直感型」 で、相手の感情をその雰囲気、仕草 声、目つき、気配等から察知するもの、もう1つは「感情ワンネス型」で、 “人の感情をまるで自分のもののように感じる感情一致能力によるものである。感情の一致とは、大量の情報が流れ込んでくる状態。” とされる。私は 「感情直感型」と「感情ワンネス型」に分類することの意義、そしてそこから得られる知見は、“自他の分離” という部分の違いではないかと考えた。
愛他的動機が先行しないと自覚する「感情直感型」の援助者は、相手に親身になって寄り添って傾聴する姿勢をみせなければならないという、利己的動機をもとにした手法をとらざるをえない。その手法や態度が不完全であれば、 援助対象者に傾聴者の利己性を感じさせてしまう。「感情直感型」では、他者の感情の理解を進めるため、予め“自他の分離”がなされている。その反面、相手のことを熱心に想っているという愛他性を意識的に伝えなければならないことになる。すなわち、愛他的動機が生じにくい自己とそれを受け取る相手との距離に葛藤が生じる。
私は、 市民公開講座「患者学」や「慢性患者ごった煮会」で様々な人の傾聴を継続的に観察した中で、患者が傷ついたり、不快な気分や不安を感じたりする要因を患者から生の声で学べることが、「感情直感型」の援助者にとって有意義でないかと考えた。
傾聴や対話において、患者が傷つき不安を抱いてしまう要因を消去的に取捨選択する訓練を積むことにより、「感情直感型」の援助者と対象者の間に寄り添った関わりがなされていることを観察した。このような過程を通して、援助者は、対象者への共感性や愛他性を生まれもった素質として備えていなくても、 学習や訓練を通じて構築していくことができるのではないかと考えた。
「感情ワンネス型」は、過去に辛い経験や闘病生活をした人に多くみられる共感の仕方である。相手の感情を自分の過去の感情に投影し、その自他の感情の一致を見出しやすい性質を保持しており、共感的配慮によって他者の苦しみを低減しようとする愛他的動機が生じやすい。しかし、自身の体験した感情は相手の感情とは必ずしも同じではないだろう。また、“自分が” 対象者を救いたいという願望をもったり、自己の存在意義を苦境にある人を救うことに求めることがある。このような、他者の苦境に直面したことで喚起される嫌悪状態を低減するという、利己的動機による援助手段を選ぶ。 共感利己性仮説の主張では、他者に接することで喚起される感情を嫌悪的なものとして一括し、援助行動を利己的なものとして捉えている。このような自身の感情の変化を自覚したり、他覚的に評価してもらうことができる機会として、「患者学」などの場に参加することは有意義だと考えた。自他の感情を分離し、ときに 対象者と一線を引くことは、援助者が本来行いたい援助に反し、対象者にとって“冷たい” 対応と感じさせてしまう可能性もある。援助者は意識的な自他の分離を”本意ではない”と否定的に捉えるかもしれない。しかし、一時的な傾聴に留まらずに長期にわたって関わり続ける援助者の存在を対象者が認識することにより、援助者の愛他性が伝わるのではないだろうか。
自分自身の直感型とワンネス型の特性を意識しながら、双方の型に必要とされる”自他の分離”を意識し、コントロールして、今後の傾聴や対話、共感に生かしていきたい。
<用語説明>
“自他の分離” とは、発達心理過程において、 自分と他者が必ずしも同じ体験をするわけではないことを自覚していく過程である。
“ミラーリング”とは、同じ状況において神経レベルで作用し 自分がする、あるいは感じると思われる用語に翻訳し、再解釈する。
“シェアードサーキッド” とは、その働きにより、人間は直感的に、周囲の世界を擬人化、あるいは擬似化する。 他者や物体に何が起こったのかを感じるための本質的な部分である。 そここで生じるシミュレーションの結果は、その人の外界に対する知識と組み合わされ、その知識に基づいて違った解釈がもたらされる。
上部卒業論文をご指導ご鞭撻頂いたの恩師(研究室担当指導教授)は、
消化器内科専門医の加藤眞三先生です。
先生の著書、『患者の力』は、患者を1人の人間としてみて、人間対人間の治療、看護、ケアを行うことを説いています。
当事者の立場からしても、1人の人間として向き合ってもらうことの尊さを痛感してきました。
私も全ての相談者さまに対して、人間対人間の共鳴の場を提供したいと考えています。
患者の力
―患者学で見つけた医療の新しい姿
「患者には力がある」!
毎日を健康に生きるために、そのためにも、
真の患者中心の医療を実現するために、いま必要なこととは。
加藤眞三教授 最終講義
2021.03.02 18:30-19:30
慶應義塾大学信濃町キャンパス東校舎講堂
恩師である加藤眞三先生 の現在
慶應義塾大学看護医療学部教授を定年退職されてから、上智大学で講義をされていたり、MOA高輪クリニックで院長としてご活躍されています。
脚注:https://tokyoryoin.net/clinic/takanawa
消化器内科や、心療内科、スピリチュアルケアをご希望の方は、ぜひMOA高輪クリニックの、加藤先生の診療日に電話で予約を取って、かかってみていただきたいです。
1人の人間として扱ってくださる、一流の先生です。
